巨蟹宮











   ぃよう、巨蟹宮までよく来たな。俺はデスマスクだ。今更ご丁寧に名乗らんでももう知ってるか。
   ・・・え?なんだって?「それはお前の本名なのか」だと?
   そこんとこは企業秘密だ。謎の多い男の方が魅力的だろうが。

   ・・・ん?なんだ、まだ質問があるのかよ。「あの死に顔たちはどこへ行ったんですか」だぁ?
   お前、良く知ってるな。大方ムウあたりにでも聞いたのか。あいつはすました顔して言うことはえげつ無いからな。
   アレはな・・・・・・俺の善意で、恵まれない国のガキどものおもちゃに寄付してやっ・・・・・うっ、なんだこの攻撃的な小宇宙は!(汗)
   こんなことするのはムウ、か!判ったよ、嘘に決まってるだろうが!だから攻撃を止めろ!頭が割れる・・・・!








           (3分後)





   ふ―――、助かった。危ねぇ危ねぇ。

   さて、お前、俺様に教えを乞いに来たんだろうが。良いぜ、こっちへ来いよ。(手招き)
   ・・・・そうだな、やっぱここは俺にふさわしく、「死」に関する言葉なんてどうだ?
   俺様の手に掛かれば、古今東西どんな言葉でも赤子の手を捻るようなもんだぜ!
   ま、処女宮あたりの誰かさんみたいに仏教一辺倒のツブシの利かないヤツは・・・・あ――じゃ――ぱぁ―――っ!(巨蟹宮に巨大落雷)








           (10分後)





   お・・・おお、すまなかったな。ちょっと色々取り込んでたようだ。(滝汗)
   じゃあ、気を取り直して始めるぜ。


   まずは「死」そのものについて軽く触れておこう。

   「死」と言う字の左半分は「骨」を意味し、右半分(「ヒ」部分)は「人」だ。つまり「人が死んで骨だけになること」を指す。まんまだな。
   ちなみに、「死」の付く熟語には「死灰復然」(しかい、またもゆ)と言うのがある。
   意味は「勢力を失ったものがまた力を盛り返す事」だ。
   ・・・・聖衣だけじゃなく身体まで一握りの灰から蘇るどこかの「兄さん」を思い出すのは俺だけか?(笑)


   後、「死」から発生した意外な熟語に「水を向ける」がある。
   意味は「相手に、思っていることを話し始めるようにしむける」事だ。
   これは、元々は「死者の霊に水を供える」動作を指していたようだ。
   巫女が死者の霊を呼ぶ時に水を供え、その言葉を聞き出したという事に由来する。本当に意外だな。



   さて、「死ぬ事」を言い換えた表現が沢山あるな。次はそれに行ってみようか。

   古文的な柔らかい表現では「はかなくなる」。逆に硬い言い方だと「卒す」(しゅっす)、「鬼籍に入る」なんてのがある。
   勿論、どちらも意味は「死ぬ」だ。「死」は人生における重要なステップであるが故に、その直接的表現は避けられて来たと言ったあたりだろうな。
   「鬼籍」とは、閻魔が持っている死人の名簿だな。所謂「物故者名簿」だ。


   ついでに「鬼」について説明しておいてやる。
   この「鬼」は「キ」と読むんであって、「オニ」じゃねぇ。
   中国で言うところの「鬼」は「幽霊」だ。主に先祖の霊を指す。
   日本で言う「オニ」のような暴力的なイメージとは寧ろ逆で、青白くて弱弱しく漂う感じだな。
   俺ンとこにいたアレみたいなもんだ。(笑)

   儒教の発想では、先祖代々の「鬼」をきちんと祀らないと「悪鬼」になって家に祟ると考えられているようだ。
   だから、まず「子孫を残すこと」が家にとっては最重要事項だったわけだ。これも良し悪しだな。
   ちなみに、荒々しい日本の「オニ」の概念はどうやら江戸時代にはっきりと確立されたものらしいぞ。



   それに対して、仏教ではどうだろうか?
   ・・・・おっと、これは誰かさんのお株を奪っちまう事になるか。チッ、仕方ないな。


   じゃあ、今日はこの辺で終わりだ。またな。










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