獅子宮











この獅子宮までよく来たな。
俺がこの宮を守護するアイオリアだ。よろしくな。



…えっ?微妙な住宅事情で困ったりはしませんかだって?
そうだな………(5秒ほど無言)まあ確かに下は薄暗い幽霊屋敷だし、上はお花畑だからな…。
ううむ、足して割ったら丁度良いような気もしないか?…え?しない。そうか、それは残念だ。
まぁ、俺としては絶えずけたたましい騒音に悩まされる訳ではないし、天蠍宮みたいに無人宮に挟まれてちょっと寂しい感じもしないから特に不満はないつもりだ。
…誰だ、今「そのくらい鈍感じゃないと巨蟹宮と処女宮の間では生きられない」と言ったのは!?






ゴホン。(咳払い)まあ良い。では俺のレクチャーに入ろうか。
何について話そうかちょっと困ったんだが、そうだな、俺らしく「肉体」に関する言葉なんてどうだろうか?…いや、肉体言語の事ではないぞ。


今日は、まず身体の天辺にあたる頭部付近に関する事を取り上げてみよう。
小説などで頭部や顔関係の単語がよく出てくるが、意外に読み方が分からなかったり、それがどこなのか今ひとつはっきりしないと言う事もあるのではないかな?



まずそうだな…簡単な所から始めよう。「項」は分かるかな?これは結構知っている人も多いと思うが「うなじ」だ。場所としては首の後ろ側の部分で、襟足付近だな。
…え?水晶聖闘士の項はどうなっているのですか?だって?
………アレはなぁ、俺も気に掛かっているんだが実はヅラなんじゃないかと思ったりもするんだ。まあその辺の事実は宝瓶宮あたりで訊いた方が確かだと思うぞ。


…で、項に戻ろう。この字の中に含まれる「頁」は、実はそれだけで「あたま」の事を意味しているんだ。
本をよく読んだり、同人誌などを作る者はすぐにこの「頁」を「ページ」と連想するかもしれないな。それは世俗の使い方で、この「あたま」が本来の意味だ。「頁」と言う字自体が「跪いた人間の頭部」を意味する象形文字であるらしい。
だから人間の「頁」(あたま)にひっくり返るの意味の「ヒ」が付くと、「傾」(かたむく・かしげる)になる訳だ。「傾」同様に「頃」だけでも「かたむく」の意味があるぞ。

「項」(うなじ)を用いた熟語に、「項背相望」(こうはい・あいのぞむ)と言う言葉がある。
他人の「うなじ」と「せなか」をワンセットでぼうっと見ている状態の事で、つまり「並んでいる」と言う事だな。
これがずっと続くと「大勢の人がずらっと並んで、後が耐えない事」を意味する。配給や人気飲食店の行列がまさにこの状態なわけだな。
聖域の闘技場でも、俺の稽古待ちで雑兵たちが「項背相望」状態になっているぞ。




次に行こうか。「項」と近い意味を持つ漢字に「領」がある。
この文字を使った単語と言えば「領土」や「領地」「領収」などと言った土地や金絡みのイメージが強いな。…え?お前には不動産も貯金も縁が無いだろうだって?
…ううむ、確かに土地はどう使って良いのかよく分からんから一切所有していないが、給料はきっちりアルファバンクに貯金しているぞ!
まあ、あれだ…平たく言うと使い道が無いんだ……。他の黄金聖闘士達は何に使っているんだろうなぁ?(首を傾げる)


…いや、金の話はこっちに置いておいて。「領」に戻ろう。
土地や金銭絡みのイメージのあるこの「領」だが、これも本来の意味は「くび・うなじ」だ。「襟」の意味もある。この字にもやはり「頁」が含まれているだろう?
「くび」は人間の身体でもはやり重要な部分だ。それこそ、此処を切られたら一巻の終わりだからな。この「重要な部分」の意味が転じて「物事の要」を意味するようにもなった。
…そうだな、「要領」と言う言葉があるだろう。これはそれぞれ「こし」「くび」を意味するんだ。両方とも大切な要の部分だからな。これが抜けては意味がないわけだ。
…いや、俺にだって要領はあるぞ!他人の話を聞かないのはそれが黄金聖闘士の常識なだけだ。
「物事の要」としての「領」には、他に「統領」や「領事」などがある。彼らは「物事の要」として他人を率いるのが仕事だ。ここから転じて「おさめる」の意味が加わり、「領収」や「領土」の「領」として使われている訳だ。



…ああ、そうだな。ここで「領」を使った言葉として一つ教えておこう。
先程の「領収」とは同音異義語として「領袖」と言う言葉がある。憶えておくと何かの折には便利かもしれない。
この「領袖」の「領」は、最初にちょっと触れたが「襟」の意味だな。つまり「領袖」「えりとそで」の事だ。転じて、他人を指図して率いる人間の事を意味する。簡単に言うと頭領の事だな。…足技は厳禁なんだろうか…?



さて、まだ他にも「これって何処のこと?」「なんて読むの?」と疑問に思いがちな部分が沢山ありそうだな。
それらについては次回に回す事にして、今日はこのくらいにしておこうか。






…ああ、久々に「頁」を使うと流石にちょっと疲れるな……。
雑兵たちが「項背相望」んでいる闘技場にでもちょっと顔を出して来るか……。











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