金牛宮
金牛宮までよく来た!俺が今回担当のアルデバランだ。よろしくな!
早速だが講釈に入ることにするか。
今回の言葉は「いわずもがな」だ!
…何?俺が仮名言葉を取り扱うと奇妙だと?
俺も立派な「ますらを」だからな!このくらいの仮名言葉は使うぞ、ワッハッハッハ。
「お前はブラジル人じゃないのか?」、というツッコミはここではご法度だ。判ったな。
さて、この「いわずもがな」だが、去年のニュースで「意味の判らない言葉」「意味は判るけど使わない言葉」として
取り上げられていたので記憶に新しい者もいるかもしれないな。
意味は「〜は言うまでも無く」「〜は言うまでも無い」だ。まあ、此処を覗いているヤツにはそれこそ
「言うまでも無い」ことだな。ハッハハ。
この言葉は、古語がそのまま現代に引き継がれて使われている。
「もがな」は古語で「〜であったらなあ」という「願望」を表す終助詞だ。終助詞「もが」に終助詞「な」が付き、
一体化して「もがな」と表現されるようになった。
「もがな」という形になったのは平安時代以降で、その前には「もがも」と言う形の表現だったようだ。
「もがな」が定着してから後は、「もがな」と「もがも」を併用していたようだ。
従って、現代以前は「いわずもがな」と「いわずもがも」という2つの表現が使われていたようだが、
後者の方は現代に入って使われなくなった。いまだに使っているのは管理人ぐらいなものだろう。
いまだに日常会話で使っていると言うから、まったく天晴れなほど神寂びた女だな。
「いわずもがな」は本来「いわないで欲しいなあ」=「いわなければ良いのに」という意味で、
それが現代語の「いうまでも無い」という意味になったんだろうな。
同様に「〜であってほしい」「〜であることが望ましい」と言う「願望」を示す言葉に、「あらまほしい」がある。
これも勿論現代でも通用するので、是非使って欲しい。
現代語で使う場合には、殆どが「あらまほしき〇〇」のように名詞にくっつけて使う。意味は「理想的な〇〇」だ。
よく見られる文学表現だと「あらまほしき姿」(理想的な姿)などが挙げられるだろう。
これも、古文的解釈では動詞「あり」の未然形+願望の助動詞「まほし」という二つの語の連係だ。
ちなみに古文の場合は「まほし」は「まおし」と発音することに気を付けてくれ。
…まあ、別に古文バージョンは学校で習う時以外は使わないかもしれないがな。
さて、じゃあこの語句を使ってちょっと練習をするか。
おお、あんなところ(白羊宮入り口)にペガサスがいるな。あいつを呼ぶことにしよう。お――い、ペガサス!
(20分後)
アルデバラン:「遅かったな、ペガサス。何をしてたんだ?」
星矢:「ゼィ、ハァ、ゼィ、ハァ、あ、あの、もうちょっと近いトコにいる時に呼んでくれないかな?
マジで息が上がっちまうよ、これじゃあ。」
アルデバラン:「…ん?そうか?ムウの所にいるみたいだったから、すぐ来られると思ったんだが。」
星矢:「…いや、結構距離あるんだって、ここ。勾配もスゴイし。…で、何の用?」
アルデバラン:「ああ、あやうく忘れる所だった。実はな…。」
(10分後)
アルデバラン:「ペガサス、お前今回は此処に何の用事があって来たのだ?」
星矢:「沙織さ…女神から書状を預かって来たんだ、黄金聖闘士全員に一通づつね。」
アルデバラン:「おお、それはご苦労だったな。俺宛の書状を読んでくれ。」
星矢:「…いいのか?じゃあ読むぜ。『昨今の黄金聖闘士達の行状については、私の理解の範疇を超える部分が
余り有ります。特に蟹座のデスマスクについては、アテネ市街での本人名義の付け届け飲食は
いわずもがな、接待と称して聖域経費にて遊興に耽っている
との報告も上がっています。
アルデバラン、実直な牡牛座の黄金聖闘士として、彼に厳重に警告を発し、
模範的な聖闘士としての心がけを説くことを貴方にお願いします。』だそうだ。」
アルデバラン:「あいつ、ツケは知っていたがまさか聖域の経費でキャバクラにまで行ってたとはな…。
即刻注意あるのみだな。」
星矢:「でもさ、なんで沙織さんはそれをアルデバランに頼むんだろう?」
アルデバラン:「それは勿論、女神がこの俺を聖闘士としてあらまほしき存在だと思されたからに違いない。
いや、聖闘士冥利に尽きるな、ハッハッハ!」
星矢:「…ところで、この『手紙』、本物?」
…と言った感じだ。どうだったかな?
「いわずもがな」、「あらまほしき〇〇」、双方ともちょっと文語めいた文脈で使うと効果絶大だぞ!
勿論、会話の中でも普通に使える。目上に対する会話や報告のセリフに入れるとぐっと文章の風格が上がること請け合いだ。
「意味は知ってるけど、あまり使わない」などと言わず、どんどん使ってみて欲しい。
手紙?…いや、これはあくまで今回の練習用にペガサスに渡しただけだ。
…あながち内容に偽りがあるとも思えんがな、今回は。
では、今回の講釈はここまでとしよう。次の宮に進むが良い。またこの金牛宮に来てくれよ!
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