バビロニア占星術に物申す!
ギリシャ・聖域
兄のサガからの命令で日本の女神の元まで使いを申し付けられたカノンが帰ってきたのは、夏も近いある日のことだった。
教皇・シオンへの復命を終え、双児宮へとカノンは階段を降りて行った。
途中、天蠍宮まで差し掛かった時、宮の主がカノンの前に姿を現した。
ミロ:「おっ、カノンじゃないか?いつ日本から帰ってきたんだ?」
カノン:「ああ、ついさっきだ。今復命を終えてきた。」
聖域でもその存在が最近まで知られなかったことと、聖闘士として認めれれる以前の経緯もあり、カノンがサガ以外の黄金聖闘士と会話を交わす機会はあまり多くはなかった。
…自然、「カノンは無口だ」と黄金聖闘士達には認識されているようだった。
ミロ:「どうだった、日本は?何か変わったことはあったか?」
カノン:「いや…特に変わりは。」
カノンはここまで言うと、少し考え込んでから言葉を続けた。
カノン:「そうだな…女神のおわす東京という街は、ゴミゴミしているがなかなか面白かったぞ。」
ミロ:「ふーん。どこかに行ったのか?」
カノン:「ああ、まあな。この聖域にいては買い物もままならんからな、いろいろ見て回った。…唯でさえサガは、俺が外に出ることを昔から嫌っていたから、外の世界を見る機会を度々作ってくれる教皇には感謝してるよ。」
ミロ:「なるほどな。で、なんか買ったのか?」
カノン:「いや、最近サガが小遣いを減らしたのでな、あまり買い物をする余裕はないのが実情だ。」
ミロ:「……小遣い……。」
おおよそ28の大男から発されたとは思えない台詞に、一瞬ミロは沈黙した。
カノンはその様子に少々肩を竦めて見せた後、徐にボトムのポケットから一枚の紙切れを取り出した。
カノン:「しかし、イケブクロとかいうところで石屋の側を通った時、なんとなく覗いていたら店員がこんなものをくれたぞ。」
ミロ:「…なんだ?「バビロニア占星術・12星座(4大エレメント)におけるパワーストーン一覧」??」
カノン:「ああ、なんでも12の星座にそれぞれ守護星や石やらを割り当てて、その相性を占っているそうだ。」
ミロ:「おっ、相性だって?なんか面白そうだな。…どれどれ。」
ミロはカノンの手から紙をひったくって少しの間眺めた。
ミロ:「なぁ、カノン。これ、結構面白そうだぞ。…どうせなら皆で集まって見てみようぜ!」
カノン:「……。ああ。だがしかし、場所はどうする?」
ミロ:「あ?いーんだいーんだ、それなら。俺んとこでやればいい。じゃぁ俺、皆を呼んでくるな!ちょっと待っててくれ、カノン。」
カノン:「あ、おい…!」
ミロは光速で階段を駆け下りて行った。
天蠍宮・ミロの私室
本人が余り頓着しないせいか、彼の部屋はかなり散らかっていた。
しかし、それ以上に女神から与えられたこの私室が広いため、他の黄金聖闘士が全員座り込んでも空間はまだ余りあった。
ムウ:「で、何をしようと言うのです?ミロ。」
食事の支度中に無理やり引っ張って来られたムウは、少々不機嫌だった。
しかし彼を引っ張ってきた当の本人は、一向にお構いなしな様子だった
ミロ:「ん?みんなでこれを見ようと思ってな。ほら。」
ミロは、黄金聖闘士全員(教皇職のシオンを除く、カノンは含む)の前に一枚の紙をヒラヒラさせた。
バラン:「なんだ、それは?」
カミュ:「…「バビロニア占星術・12星座(4大エレメント)におけるパワーストーン一覧」??これは何だ、ミロ?」
ミロ:「こいつは、カノンの日本土産だ。」
カノン:「いや、別に土産というほどの物じゃないだろう。…第一、タダで配っていたものだしな。」
サガ:「カノン、お前まさか、任務を疎かにしていた訳ではないだろうな?」
カノンの方を見るサガの視線がみるみる黒くなる。
カノン:「…い、いや、これは任務時間外に立ち寄った店で貰ったんだ。断じてサボリではない。」(汗)
サガ:「そうか、それならいい。」
シュラ:「それで、そのカノンの土産とやらには何が書いてあるんだ?」
カノン:「だから、土産というほどの物ではないと…。」
ミロ:「うーん、つまりだな、この紙に書いてあるのは俺たちの12の星座についてのグループ分けや、その相性についてだ。そうだよな、カノン?」
カノン:「あ…ああ。おおよそのものだし、どこまで本当かは知らんがな。」
ロス:「なんだか楽しそうだな。」
リア:「兄さん、またそういう無責任なことを言わないで下さいよ。兄さんのツケはいつも俺に回ってくるんだから。…逆賊の汚名とか。」
デス:「それ、やっぱり気にしてたんだな、お前。」
リア:「いや…なんでもない。只の独り言だ。気にしないでくれ、デスマスク。」
アフロ:「…それで、ミロ。私たちは一体どういった具合に分けられているのだ?」
ミロ:「えっと、だな………。」
ミロは、黄金聖闘士の座る円陣の真ん中に、大きな紙を一枚置いた。
そして、紙の真ん中に大きな円を描くと、ピザを等分割するように中心点から12等分に分けて線を引いた。
(管理人注:皆様も是非、お描きになってみて下さい。)
ミロ:「で、この12の空間に、それぞれ俺たちの星座のシンボルを描いて行くだろ。」
おぼつかない手つきで、ミロは十二宮の火時計よろしく、それぞれの宮のシンボルを描き込んで行った。
童虎:「おお、これは聖域の火時計と同じものじゃのう。」
ミロ:「そうです。…で、この紙によると、ムウの白羊宮から順番に、「火→地→水→風」というエレメントが割り振られるそうです。」
バラン:「つまり、ムウは「火」で、俺が「地」なわけだな?」
サガ:「私とカノンは「水」、デスマスクは「風」ということだな。」
リア:「それでは、俺は?」
カミュ:「アイオリア、君はまた「火」に戻る。」
シャカ:「…私は「地」だというのだな?」
シュラ:「どうやら、そのようだな。で、そこから何が判るというんだ、ミロ?」
ミロ:「まぁ、そう急かすなって。えっと、この紙によると…「円の120度同士に位置する同じエレメントの星座同士は、相性がとても良いそうです。」だそうだ。」
ロス:「つまり、例えば、「風」のエレメントの星座の人間は、同じく「風」のエレメントの星座の人間と相性が良いってことだよな。」
カミュ:「そうです。」
デス:「じゃぁ、順番に行くぜ。…まず、「火」のエレメントだな。「火」のエレメントは、と…。」
「火」のエレメント……ムウ、アイオリア、アイオロス
ムウ:「いきなりダメですね、バビロニア占星術。もう終わってますよ。」
バラン:「ムウ、お前…いきなりそれはないだろう。(汗)」
ムウ:「だって、この組み合わせのどこをどう解釈したら、相性が良いと言うんですか?よりにもよって、私とあのアイオリアの相性が良いとは。信じられないですよ。」
リア:「ムウ、お前俺に喧嘩を売ってるのか…?」
サガ:「…ムウ、冥界篇で何があったかは知らんが、そのへんで止めておけ。」
ムウ:「…。」
サガの貫禄のせいか、流石のムウも渋々それ以上は何も言わなかった。
しかし、一度沈黙に沈んでしまった雰囲気は、なかなか破られそうになかった。
ロス:「あ!でも、ホラ、見ろアイオリア。俺たち兄弟の相性は良いじゃないか!…良かったなぁ、アイオリア!!」
リア:「…そうですか?…じゃぁ、俺はなんで兄さんのせいで13年間も「逆賊」呼ばわりだったんだろう?…はっ!…い、いや、でも、それだったらサガとカノンだって相性が良い、とうことになるのでは…?」
カノン:「俺とサガは同じ日生まれだ!エレメントが一緒なのは当たり前だろうが!!…そう考えると、やっぱりアテにならんのか、この占い…。」
シャカ:「邪教の占いなど、アテにならないということが判ったかね、諸君。やはりここは、神仏と毎日対峙しているこのシャカの教えを…。」
ムウ:「貴方のほうが、よほど邪教っぽいですよ、シャカ。だいたい貴方、「神仏と対峙」って一体どこの神仏ですか?」
シャカ:「ムウよ、今私に何か言ったかね?」
ムウ:「さあ、貴方のひが耳じゃないですか?ねぇ、アルデバラン。」
バラン:「ムウ…、そういう状況で話を俺に振るのは止めてくれ…。(汗)」
デス:「まあ、いいじゃねえか、占いなんだしよ。で、次はどうなってんだ?」
アフロ:「確か、次は「地」だったな。」
「地」のエレメント……アルデバラン、シャカ、シュラ
アフロ:「…なんだか、全っ然接点が無いように感じるのは私の気のせいか…?」
カミュ:「いや、私も同じく、だ。」
シュラ:「すまん、このエレメントに属しているらしい俺自身もまったく同感だ。」
ミロ:「アルデバランは人当たりが柔らかいから、誰とでも相性良さそうだし、シュラも基本的に付き合い良いほうだよな。」
ムウ:「このグループが違和感ありありなのは、真ん中の人のせいじゃないですか?」
シャカ:「ムウ、私は先ほどから、君の周りに邪悪な小宇宙を感じるのだが、それはこの私に成仏を求めているのかね?」
ムウ:「いえ、まだ私は死ぬ気はさらさらありませんよ。この高齢化社会で、年金が貰えるところまでは生きるつもりですからね、私は。」
ミロ:「…年金??(汗)」
童虎:「ムウは、夕飯の支度が気になっておるのじゃろう。…シャカよ、あまり気にするでないぞ。」
シャカ:「…老師がそこまで仰るのなら。」
ロス:「で、次はどうだ?」
デス:「お次は…と。」
「風」のエレメント……双子、童虎、カミュ
ミロ:「うーん、このへんはなんとなくまだ統一感を保っているような感じだなぁ。確かに相性も悪くなさそうだし。……。」
アフロ:「そうだな。サガやカノンは「風」というイメージにぴったりだし。………。」
ロス:「なんとなくクールな感じのカテゴリーだな。…………。」
シュラ:「………真ん中は明らかにイメージ違うだろうが!気付けよ、お前たち!」
ムウ:「あーあ、皆思っていても口にしなかったことをとうとう言いましたね、シュラ。」
童虎:「ほっほ。いいのじゃよ。ワシ自身、皮期間が長すぎて昔の姿をすっかり忘れとったぐらいじゃからのお。確かにちと、暑苦しい見てくれかもしれんのう。」
デス:「…大した食わせもの爺さんだな。五老峰で闘わなくて良かったぜ…。」
リア:「隣にいるから聞こえるのだが…。(汗)」
アフロ:「…。最後に行こう、な?」
ミロ:「お…おう。(汗)最後は「水」だな。」
「水」のエレメント……デスマスク・ミロ・アフロディーテ
一同:「やはりお前らは「水」か!海産物コンビ!!」
デス:「何言ってんだよ、お前ら…!一遍黄泉津比良坂巡りにでも連れていってやろうか!?」
アフロ:「…失礼だぞ、お前たち。良いではないか、星座のイメージとぴったりだろう?」
ミロ:「…でも、俺だけ水中生物じゃないぞ。」
サガ:「…あ、ああ。確かにそうだな。しかし、ここの3人はなんとなく一番相性が良さそうではあるのではないか?」
カノン:「確かにそうだな。連れ立ってる組み合わせとしては一番違和感がないな。…ミロに「水」というイメージはあまりないがな。」
ムウ:「それを言えば、私だっておそらく「火」のイメージじゃないでしょう?…残りの二人は暑苦しさがまさにぴったりですけどね。」
バラン:「……。(汗)」
一同:「……。」
しばし、沈黙。
ミロ:「あ!この占い、続きがあるんだぜ!えっと…「自分の星座から両隣90度に位置する星座とは、相性が悪いです」…。う…、なんかマズイ占いだな、これ。(汗)」
カミュ:「うむ、いかにも軋轢の生じそうな話だな。」
ムウ:「いいんじゃないですか?寧ろこういった険悪な占いのほうが私は好きですよ。」
シュラ:「ムウ、お前、ストレスでも溜まってるのか…?(汗)」
ムウ:「いいえ、全っ然。…えーと、つまり、自分の星座から両隣に三つ離れた星座とは相性が悪いんですよね?」
ミロ:「あ、ああ…。」(汗)
ムウ:「えーと、じゃあ私は……デスマスクとシュラですか。なんかいい感じですね。バビロニア占星術もいいとこありますね!」
カノン:「お前、さっきと言ってることが正反対だぞ…。」(汗)
ムウ:「だって、冥界篇で私に刃向かって来た張本人ですよ。」
リア:「…。」
バラン:「あまりこういうのは好きではないが……俺はアイオリアとカミュということになるな。」
リア:「いや、俺にはそんな気は毛頭無いぞ。」
カミュ:「私もだ。」
童虎:「…ほれ、例えば、の話じゃて。そんなにムキになるではない。」
カノン:「しかし、アルデバランが絡むと信憑性が低くなるな、このテの話は。」
ミロ:「ああ。ホントに良いヤツだからな…。」
サガ:「…うむ、私とカノンは…シャカとアフロディーテか?」
アフロ:「え?本当に??13年間ずっと忠誠を誓ってきたのに、それは酷い…。」
デス:「例えだって老師も言ってんだろ、気にすんなよ。」
アフロ:「…そ、そうか?…そうだよな。うんうん。」
ミロ:「しかし、サガとシャカの相性が最悪ってのはどうしてだか納得してしまうなぁ。」
シュラ:「確かにな。実力も伯仲しているしな。」
サガ:「……(汗)。」
カノン:「……(邪笑)。」
シャカ:「……(寝ている)。」
デス:「おっと、お次は俺様だな。俺は…さっき出たムウと、…後は老師だな。」
バラン:「……。」
リア:「…なんだか、原作そのものだな。その組み合わせは。ツッコもうにもツッコむ余地がない…。」
デス:「……確かに、俺もそう思わなくもないぜ。ま、俺様は誰と相性が良かろうが悪かろうが一向に構わねぇけどな。(笑)」
アフロ:「…流石だ…。」
リア:「俺は…さっき出たアルデバランと…ミロか?う…ありえんな…。」
ムウ:「お互いの単細胞さ加減が、諍いの原因にでもなるってことじゃないですか?」
リア:「……やはり、喧嘩を売っているんだな、ムウ?」
ムウ:「そうやってすぐ頭に血が上るのが良い証拠ですね。」
バラン:「…ムウよ、俺も「単細胞」なのか…?」(汗)
シャカ:「ふむ…今の私は機嫌が良いのだ。君達の暇つぶしに付き合ってやらんこともない。」
ミロ:「さっき居眠りしてたからだろ…。」
カミュ:「ミロ、あまり大きな声を出すな。」
シャカ:「このシャカ、弱者に対する慈悲の心は持っておらん。が、来るものは拒まんぞ。」
シュラ:「…それは威張って言うことなのか…?」
サガ:「深く考えるな。シャカはおだててさえおけば、大概のことは引き受けてくれる。…教皇時代、よくそうやって無理難題を押し付け…もとい、引き受けてもらったのだ。」
シャカ:「さて、で、神に最も近い男であるこの私に盾突こうという愚か者は誰だね?」
カノン:「別に、盾突いているわけじゃないだろう。ただ相性が悪い、というだけで。」
ムウ:「貴方たち、ムダですよ。…それこそ「シャカに説法」というもの。」
カミュ:「それは意味が違うだろう。」
シャカ:「で、誰なのだね?ミロ、答え給え。」
ミロ:「……双子とアイオロス、だ。」
デス:「げっ!最重要人物じゃねぇか。」
アフロ:「ああ。巨頭と言っても過言ではない。しかし、シャカならある意味自然なことのように感じるのはナゼだ?」
バラン:「と、いうより、シャカと相性の良いヤツが存在するとはまず思えんのだが…。(汗)」
リア:「ああ、本当にな。」
シュラ:「どうして女神は、このような男を聖闘士としてお選びになられたのだろう…。」
一同:「……。」
童虎:「ほっ、困っておるようじゃの、お主ら。どれ、ワシの番にするが良い。…シャカも眠ってしまったことだしの。…ワシは…前に出たデスマスクと、後はシュラ、お主じゃ。」
シュラ:「いえ!滅相もない!(顔面蒼白)」
童虎:「ホッホッホ。お主が真に女神への忠誠の篤い男だということは、この童虎、よく判っておるわ。冗談じゃ、冗談。…それにお主には、紫龍が随分世話になっておるでの。礼を言うぞ。」
シュラ:「いえ!こちらこそ老師には手違いを致しました。申し訳ありません。」
ちょっと離れたところから
ミロ:「…なぁ、あの二人、師弟っぽくないか?なんだか。」
ロス:「ああ。」
カミュ:「なんだか、シュラが紫龍のように見えてきたぞ、私は。」
デス:「あの二人、放っておいたら永遠に続きそうだな。面白くねぇか?」
カノン:「…次に行こう。」
ミロ:「おっ、俺の番だな。俺は、さっき出たのがアイオリアだろ。後は……はっ!」
カミュ:「…私だ。…そうか、そうだったのか。」
デス:「おお!友情の崩壊か?」
アフロ:「…デスマスク、趣味が悪いぞ。」
ムウ:「ふふふ、なんだか良い雰囲気になってきましたね。」
リア:「…ムウ、お前本当にストレス溜まっていないか…?(汗)」
カミュ:「そうか…私とお前は相性が悪いのか…。…いや、それでも私は構わない。お前には氷河が世話になったし、氷河の聖衣に血も分けてもらったし、氷河の…(以下略)」
デス:「おい、あいつ、氷河のことしか言ってないぜ。」
カノン:「うむ、あいつの脳みそはいつでもあの小僧のことで一杯のようだな。」
サガ:「あれでは、占いの相性によらずとも本当に相性が悪くなりそうだ…。」
ロス:「しかし、ミロのほうはあんまりそのことに気がついてないようだな。ははっ。やはり良い組み合わせだな、サガ。」
サガ:「…それを「良い組み合わせ」と言っていいのか、私にはわからん…。」
ロス:「お?組み合わせでは俺が最後か?(この後の組み合わせは、もう既に一度出ています)…俺も長い間死んでたから、あまり皆のことを理解しているとは言えんが。…俺は、前に出たシャカ以外は…アフロディーテか。」
アフロ:「う…。」
バラン:「どうした?アフロディーテ?」
アフロ:「……。」
ロス:「アフロディーテは一体どうしたんだ、カミュ?」
カミュ:「……。アフロディーテは、13年前の一件を思い起こして良心の呵責に苦しんでいる模様です。」
ロス:「うん?…そんなことか。…アフロディーテよ、もう昔のことだ。気にするな。…お前らしくないぞ。」
アフロ:「……。(涙)…はい。ありがとうございます、アイオロス。」
サガ:「……(号泣)」
ミロ:「サガ、どうした?」
サガ:「いや、なんでもない。」
ムウ:「なんでもなくはないでしょう、その涙。サガ、貴方、一度眼科に罹ったほうが良いですよ。」
カノン:「…。(苦笑)」
ムウ:「それにしても、あの人たち(老師とシュラ)、いつまで話し込んでいるんでしょうねぇ?…さて、私はそろそろ白羊宮に帰って貴鬼に夕飯を食べさせなくてはいけませんし、このへんで帰るとしましょうか、みなさん。」
その日の夜、双児宮にて
いつもの如く、双子による風呂争奪戦が繰り広げられていた。
サガ:「カノン、待て!風呂は私が先だと言っているだろう。」
カノン:「やだね。お前は長いから湯が冷めちまう。先に入らせてもらうぞ。…只でさえ俺は任務帰りなんだからな。今日ぐらいは俺が先だ。」
カノンは踵を返して、浴場の入り口に向かおうとした。
途端、サガの大きな手が、そのカノンの肩口を掴んだ
サガ:「…待て、カノン。」
カノン:「なんだよ!?まだ用事か?」
サガ:「お前…今日のアレは、私たちの交流を図るためにやったのだろう。」
カノン:「…ばっ!バカ。そんなワケあるか!ありゃ成り行きだ!何言ってるんだ、サガ!」
サガ:「…フフッ。」
カノン:「…!!…とにかく、俺は疲れてるんだ、風呂に入る!!」
カノンは怒った様にドスドスと荒い足音をたてて浴場に消えて行った。
サガ:「あいつも、私たち皆の過去の経緯や軋轢のしこりを気に掛けていたのだな。…そして、皆に打ち解けたいと思うようになってきたのだな。あいつが…あのカノンが…。」
ソファに座ってカノンの後姿を見つめていたサガは、テーブルの上に置いていた自分のバスタオルを頭から被った。
…誰の目にも、その涙が触れることのないように…。