ROUND 4.8  四日目(4)  クレタ→アテネ経由サントリーニ島







9月18日(土)








      <世界で一番美しい夕焼け>

   時刻は6時近く。先程までは目がチカチカするほど眩しく輝いていた白い壁の色の僅かな変化から、
   そろそろ日が傾いて来たのが実感できるようになってきました。
   イアの街を東西に抜ける大通りを、二人はゆっくりと西側へと進みます。
   通りは、西に進むにつれて徐々に人通りが多くなっていました。




   途中、先程ピアスの購入を迷いに迷ったあのアクセサリー屋を通りかかりました。
   う――ん、もう一度入ってみるか・・・。


   中に入ると、薄暗く照明を落とした店の奥から、店主とおぼしき30代くらいのおじさんが出て来ました。

   うっ、ちょっとゴツい感じで怖い・・・!←他人の事が言えるのか!(笑)

   気に掛かっていたあの砂糖菓子ピアスは、ショーケースの中に入っていて値段が判りません。
   思い切って訊いてみると、「98ユーロ」と言われました。(1ユーロ=135円)
   何の石かはよくわかりませんが、シルバーのピアスにしてはやっぱり高額です。(涙)


   「まけてもらえませんか?」と交渉してみたものの、「一点ものでウチのオリジナルだから無理だなぁ。」と
   あっさり拒絶されてしまいました。
   う――ん、でも欲しい・・・!
   仕方なく似たような他のピアスを見てみましたが、石の色がちょっと薄いものでも92ユーロや88ユーロ。
   あまり値段は変わりません。
   だったら、やっぱり一番気に入った98ユーロの物が良いなぁ・・・。



   暫し考えた後、思い切って98ユーロの砂糖菓子のようなピアスを購入することにしました。
   ええいっ、漢は度胸!(違)此処で買わずにどこで買う!?(笑)



   店の奥のレジで100ユーロ札を支払うと、丁寧に梱包されたピアスとお店のカード、
   作者(おじさん)のサイン入りギャランティーカードを渡してくれました。
   そして、渡されたお釣りを見ると・・・・・あれっ?10ユーロ札だよ!?


   管理人が顔を上げると、おじさんは車田漫画のキャラの如くニコっと笑いました。
   ・・・・おじさん、ありがとう・・・・!(感涙)




   近くのお店で、更にオリンピック公式グッズのノースリーブポロシャツ(24ユーロ)と
   サントリーニの写真ポスター(一枚4ユーロ)二枚を買って管理人、大満足でした。(笑)


   時刻は6:30。あと一時間で日が沈みます。


   街は、夕日を反射してオレンジ色に染まり始めます。








果てしない〜闇につ〜つま〜れ〜♪

金色のイアの街








   西に伸びる道は、人が多くなるのと反比例してだんだん細くなり始め、やがて管理人の身長くらいの幅の小道になりました。

   両脇にはびっしりと土産物屋やカフェ、タベルナが建ち並び、フィラタウンの繁華街と同じくらいの賑わいを見せていました。
   どのお店も魅力的ないでたちなのですが、一件づつ寄っていると確実に日が暮れます。(笑)
   どうやら遅くまでやっていそうな雰囲気なので、日が没してから後で来ようぜ、と先を急ぎました。
   道は所々で枝分かれしていますが、明らかに一番人通りの多い道(笑)を進めば多分夕日スポットに辿り着くはずです。

   西から徐々に北向きに緩やかにカーブする細道をひたすら進むと、いきなり視界が開けました。










良い腕してるね、管理人!(違)

夕日に浮かぶ断崖のドーム。海とのコントラストが圧巻。








   わぁ・・・・・・・、凄い!


   あちこちで、青いドームや白い壁に金色の夕日が眩しく反射しています。
   西〜北西に向けて、切り立った断崖にびっしりと段を築いてドームや白い壁のカフェなどが立ち並ぶその姿に、
   管理人は圧倒されました。


   もはや大きな道は無く、人が擦れ違うのがやっとの通路があちこちに枝分かれして伸びています。
   そして、路地の上・手擦り・階段などのちょっとでも座れそうな場所と言う場所には、
   今か今かと日が落ちるのを待ち構える人たちが一杯でした。
   ・・・一体、どこからこんなに沢山の人たちが沸いてきたのでしょうか?(笑)
   ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカetc…、世界中の全ての国の人たちがまるで一堂に会しているみたいな、
   何とも不思議な光景です。
   皆、一様にカメラを構えていたり、同行人と話しに興じながら日没を待ちます。
   カメラも、一眼レフから携帯カメラまで、種種雑多。



   ちょっと下を見ると、断崖のあちこちにあるカフェやタベルナでゆっくりと日没を待っている人たちもいます。
   ・・・・・・うぬぅ、その手があったか・・・・・!(笑) ←ラオウ化する管理人
   ちょっと心引かれたのですが、夕食はフィラに戻って取ろうと話していたので、
   大人しく人込みを掻き分けて座られそうな場所を探しました。



   おもちゃのようにごちゃごちゃとした道を進むと、なんとか座られそうな場所を発見!
   階段になっている部分の通路脇だったのですが、運良く二人分のスペースが空いていました。
   管理人、潔くで――んと座り込みました。(笑)

   時刻は6:45。日没までまだ45分もあります。
   仕方が無いので、二人、ロンドン便に引き続き今度は「三国志しりとり」を始めました。(爆笑)


   管理人:「甘寧」
   海里:「『い』……。『い』っていたっけか!?」
   管:「ふっふっふ、いるよ。」
   海:「…誰!?」
   管:「伊籍。」
   海:「…ああっ!しまった!!」


   ………サントリーニまで来てこんなバカな事をするのはお前たちだけだ!(爆笑)




   さて、割と人通りの多い西側の通路脇に陣取った我々でしたが、後ろはひっきりなしに人が通り過ぎて行きます。

   後で判ったのですが、どうやら管理人達のいたあたりが一番人が多かったようです。
   もう少し北側に移動すると空いている場所が結構あった模様。(笑)
   やがて、管理人達の後ろにも人が立ち見を始め、我々が足を投げ出している下の通路も人で一杯になってきました。
   ・・・・・一体、どこまで増えるんだ、この人達・・・・!?(汗)







人が鈴なり

小道に群がる人・人・人…!下の通路も全部こんな感じ。(笑)





   その後もずっと人は増え続け、背中を人が掠める事も多くなってきました。
   目の前の海は夕日を反射して煌き、ティラシア島との間をゆっくりとフェリーが通り過ぎて行きます。





   …そして、7:15を過ぎた頃、遂に日が沈み始めました。
   世界中の人たちが、一つところで同じ物を見、同じ仕種をしています。なんと不思議なのでしょう。
   先程まではざわざわしていた周囲が、急に静かになりました。




   7:30、日没。
   …長い、そしてたった一度の今日と言う日の日暮れです。







私のバカメラでは限界・・・!

「世界で一番美しい夕暮れ・2004年9月18日」








   …そう言えば、ゆっくり夕日を眺めるなんて事も最近はなかったなぁ。
   と管理人がマドロスしていると、周囲が一斉にまたメインストリート方面に戻り始めました。


   …早っ!ってか「日が落ちる」瞬間だけ見てもう満足なのか!?


   軍隊のように一斉に戻って行く白人さん達の背中に、管理人、内心でツッコミを入れてしまいました。


   海里:「…日暮れってさ、日が落ちてから『やうやう暮れ行く』空の色や空気を味わうのが醍醐味でないかい!?」


   さすが国文学、海里君おみごとです。(笑)
   …確かに、その場に残ってまだ空を眺めているのはアジア人ばかり。・・・文化差?




   …と言う訳で、更なる「情緒」を求める我々は来た道を戻らず、人波に逆らって更に北西へと道を進んで行きました。
   北へと道を登ると、段々人が少なくなってきます。
   しまったな、最初からこっちまで来ていれば良かった…!(涙)



   しばらくすると、大きな広場に出ました。
   広場とは言え、テニスコートよりも狭いスペースで、草が生えています。
   ここからは、南西に色褪せたドーム、西に海、そして北西に風車が見えました。
   なんだか、絶景ですよ・・・・!









黄昏の景色(1)。色褪せたドームと暗闇の色合いが美しい・・・。







一個だけ(笑)

黄昏の景色(2)。広場から、北西を臨む。ミコノスの「カト・ミリ」のような風車。








   「こっちで観れば良かったねぇ。」と二人で話していると、後ろから声を掛けられました。

   「写真、撮りましょうか?」

   ・・・・・・おおお、日本語だ!(笑)
   振り返ると、大学生くらいの男の子二人連れでした。
   ・・・お前たち、二人で旅行か!?(笑) ←お前たちも女二人だろうが!


   折角なので、二人一緒の写真を撮ってもらいました。

   管理人が「私たちは今日クレタから来たんだけど、飛行機がプロペラ機で怖かったよ。」と言うと、
   男の子が「僕たちはフェリーなんです。…飛行機だなんて、お金持ちなんですね!」と謎の一言。
   …いや、確かにフェリーの方が3分の1くらいの費用ですが、そんなこと言われても最初から飛行機移動の企画だし…。(笑)
   (ちなみに、飛行機だと国内便はだいたい一回80ユーロ前後。フェリーは25〜35ユーロ。我々はクレタから二回乗ったので
   合計150ユーロ程度の交通費なのに比べると確かに安いと言えば安いですが。)

   「いや、金持ちじゃないですってば。」と取り敢えずツッコミ返しておきました。(笑)




   さて、本当に暗くなってきたので我々も引き返すことにしました。
   元来た道を戻ると、道々のカフェやタベルナでゆっくりと食事を取っている人たちが沢山いました。
   暗い海を見ながらご飯…、ちょっと引かれます。
   ですが、帰りのバスが10時くらいに終ってしまうので此処でゆっくりするのはちょっと無理。
   (イア→フィラのバスは、夜8時台までは各時20・50の二本、9時台は一本。時間は日によって違うので、
   バスが着いた時に確認しましょう。バス停付近の黒板に書き出してあります。)
   やっぱりフィラに戻って食事をしよう、と8:20のバスに乗るべく道を急ぎました。







夕さりくれば・・・

夜を迎えたイア。すごい断崖ですね。





   賑やかな大通りまで戻って、少しスピードを落しました。







街の灯りがとても綺麗ねイアタウン〜♪

夜の灯りが点る街





   …わあ、灯りが綺麗…!


   昼の明るい日差し、夕方の黄金の光、そして夜の灯火…。
   イアはいくつもの顔を持っています。そしてそのどれもが信じ難いほどの美しさ…!


   管:「ねぇ、明日はここ、もう来ないことにしてたけどさぁ、やっぱり日暮れだけでも見に来ない?」
   海:「うん、私もそれ考えてた。これを一回しか見ないのは勿体無いよ。」



   …ごく自然に、二人は明日の予定を取り決めていました。









      <フィラの晩餐>

   バス乗り場まで戻って来ると、人・人・人!
   …あれだけ人間が吹き溜まっていたので予測はできていたのですが、やっぱり凄い人の群です。(汗)


   最終バスはこんなもんじゃないらしい、とガイドに書いてあったので、これでもまだマシな方なのでしょう。(笑)
   やがてフィラからバスがやってきました。人が降り切ると同時にどっとみんなが殺到します。

   …ふ―――、どうにか座席を確保。
   後ろの乗り口(観光バスタイプなので、前と後ろに入り口がある)のすぐ前の座席です。

   管理人、窓側の席にどすっと腰を下ろしたその瞬間…「うぎゃぴぃぃぃぃ!」(笑)
   席の真ん中の何か堅い部分に思いっきり尾てい骨をぶつけてしまいました。
   痛――い、痛いよ兄さん!!(涙)


   …はっ、横にさっきのビンボー旅行組が!
   は…恥ずかしい…!(笑)



   うっとりとした表情の乗客たちを乗せて、バスは一路フィラタウンへ。
   暗闇の中を走ること20分、フィラタウンに戻ってきました。




   バス停を降りたところで、海里君が徐に管理人を呼びとめました。
   どうやら、昼間に気になっていたペンダントを購入する決心がついた模様。
   じゃあ、先にアクセ屋に行こう、と二人はフィラの繁華街を足早に歩き出しました。



   イア同様、フィラタウンも夜が長く、とても賑っています。
   もう9時近いと言うのに、閉まっている店は一つもなく…いや、閉まる気配すら感じさせませんでした。
   本当にギリシャ人の宵っ張りさ加減には脱帽です。(笑)




   昼とは逆方向から攻めたにも拘らず、なんとか繁華街の北側の端にあるアクセサリー屋に到着。
   重い木のドアを開けると…やってました。ホッ。


   海里君、早速ペンダントヘッドを購入。
   夕方に管理人が高額ピアスを購入したのに釣られる形でした。(笑)
   …良いよね?旅行なんだし、たまにはさ。



   店を後に、もう一度南側に引き返します。
   エリスルー・スタヴルー通りの南側にある「ニコラス」と言うタベルナで夕食を取る予定です。
   折角ですし、「ニコラス」に着くまでゆっくりフィラの繁華街を寄り道することにしました。



   もう9時を過ぎていたのですが、お土産屋には人が一杯。
   昼間はざ―――っとしか見て回られなかったので、こうして改めて見ると本当に色んなお店が軒を連ねています。


   お酒の店では、サントリーニ島の形をした瓶に入ったウゾやワインもありました。
   海里君、これが気に入った模様。でも、買わないで値段をチェック!(笑)
   管理人も貴金属を中心にちょっと覗き見をしてみました。
   …まだ、重いお土産は徹底してアテネで買うつもり満々です。(笑)



   さて、ウロウロしているうちに「ニコラス」に到着しました。

   こちらのお店は、観光客向けのタベルナが林立する繁華街の中で、地元の方にも大人気のお店。
   うなぎの寝床のような細い幅のお店は、奥が広くなっていてさっぱり見えません。
   そして…ずらっと並んだ待ち席の椅子。本当に大人気のようです。
   座っていると、15分ほどして席に案内されました。



   店内はやはり手狭で、4人掛けのテーブルが10〜14くらい。
   地元の人たちはみんなゆっくり食べるので、これでは確かに回転が悪いかもしれません。


   蟹さんに「『ニコラス』はオススメですよ――!でもちょっと待つかも…。」と言われていたのですが、確かにその通り。(笑)




   そして、席に着いて気がつきました。
   ・・・・・・手元にメニュー表が無い!(汗)


   その日のメニューは、店の奥側に掛けられた黒板に書いてあるようですが……が――ん!全部ギリシャ語!!
   ・・・流石は地元の人のお店だ・・・・!


   しかも、微妙に遠くて黒板の字が見え難い・・・!
   音読は出来ても、何の料理なのか判らないものだらけ。
   仕方が無いので、ウエイターのおじちゃんに「イカの唐揚げはある?」と英語で聞くと
   「シーフード(魚ではなく、イカのことらしい)の調理にはライセンスが必要で、
   ウチはそのライセンスが無いからイカは出せないんだ。」と言われてしまいました。うぬぬ。

   海里君に事情を説明し、メニューを見なくても絶対ありそうな「ムサカ」と「スブラキ(ポーク)」を頼んだのでした。(笑)
   な・・・情け無い・・・!(笑)


   昨日飲んだ「AMSTEL」が忘れられなかった管理人、早速頼んでみたのですが品切れとの事。
   かわりにハイネケンを頼みました。…くっ、ギリシャまで来てハイネケンかよ…!
   (しかも、外国ビールの方が高いのであった!)




   チャージのパンをうまいうまいと齧っていると、すぐムサカとスブラキが出てきました。
   …早―――い!
   スブラキは相変らずフライドポテトがてんこ盛りになっています。ボリュームばっちりだね!


   スブラキにレモンを絞って食べると…旨い!!ポテトもおいしい!!
   ムサカも洗練された味でした。




   ビールを飲みながらぼーっと黒板を見ていると、黒板の隅っこのほうに「φαβα」と言う文字が有る事に気が付きました。
   「φαβα」(ファバ)とは、茹でたレンズ豆を潰してオリーブオイルとレモン、塩で味を付けたペーストで、パンに塗って食べます。
   レンズ豆を特産とするサントリーニの郷土料理です。
   ・・・これは、頼まねば!!


   早速おじちゃんに頼む事5分、お皿に盛られたファバが出てきました。
   パンに塗って齧ってみると、ざらっとした素朴な味わい・・・v
   酒のつまみにはちょっと物足りないけど、毎日食べたい味でした。多分、管理人これは作られます。
   豆好き海里君も大絶賛!(笑)是非お試し下さいませ。


   本日の夕食:スブラキ、ムサカ、ファバ、ハイネケン一本、水・・・25ユーロ(チャージ込み、二人分)





   夕食を終え、二人は帰途に着きました。
   「ニコラス」は比較的ホテル側にあるので、すぐにテオトコプールー広場の裏(ささくれ地点)に出ました。
   時間は11時近くを回っています。
   アメリカのドラマに出てきそうなフィラタウン郊外の乾いた一本道を歩きながら、
   二人、今日一日で出会った空前絶後の風景を魂が抜かれたようにゆっくりと反芻していました。




   フロントのある建物の横を最早ナチュラルに通過し、自分たちのコテージに戻ってきました。
   プールにはもう人影が無く、静かにライトアップされた水面がゆらゆらと青く揺れていました。

   ドアを開けると・・・・・・入り口と逆側の窓が全開になっている!!(驚)
   慌てて調べてみると、我々の鍵の掛け方が甘く、唯単に勝手に風で開いただけのようでした。(笑)
   一階にも拘らず、誰かが入ったわけでも何か盗られたわけでもありませんでした。
   う――む、さすがサントリーニ。日本以上の治安の良さ。(笑)


   取り敢えず窓を閉め(笑)、都合よく乾いた洗濯物を確認。

   交替でひろ―――いお風呂に入った後、脳裏の美しい景色と供に眠りについたのでした。


   よおっし、明日はサントリーニを味わい尽くすぞ!