ΣΑΓΑ
14年の間許婚であった男の名が刻まれた墓碑を、はそっと指でなぞった
頃は夜半。白い石碑の表面はしっとりと夜露に濡れ、一層冷たく感じられる
墓標を掠めたの黒衣の袖口が俄かに湿り気を帯びたのは、墓の主の涙であったのか、それとも黒衣の主が14年間流し続けた不安と絶望の涙の一部であったのか
…或いは、その両者であったのかもしれない
悲しみを受け入れたの瞳は、もう長い事生気と言う物を感じさせない
墓碑の前に跪くの背はまるで老婆の様に萎れ、全ての歓びを忘れ去ってしまったかの如くに思われた――実際、そうであったのだが。

通常であれば夕刻には聖域を後に家路を辿るは、この日は聖域に留まっていた
昨今聖域を包んでいた不穏な気配が今宵は一層強まったとして、一種の戒厳令が布かれたためだ
一切の人員は聖域に留め置かれ、一人たりとも外へ出る事は罷りならんと女神直々の勅令が下されている
全員が各々の持ち場を厳守するようにと触れが出た以上、墓守を務めるは一人、聖域で最も静謐なこの場にその身を置くより他に行く宛てもなかった
無論、墓場の入口には雑兵が二人づつ交代で番に立ち、数時間おきに墓地の内部に哨戒に回っては来る
だが、幾ら其処に眠るのが嘗ての聖闘士達とは言え、夜の墓場とは実に気味の悪いものだ
そそくさと足早に雑兵達が通り過ぎて行くのを、は先刻より何度も目にしていた
…別段構わないのだ、それでも。
には静謐なこの土地こそが安らぎであり、恐ろしいなどとは露ほども感じはしない
………自分の最も大切な人が、此処に眠っているのだから
寧ろ、夜の闇は故人と自分との間に流れる静かな一時を供してくれているようにも思え、は昼間よりもなお一層の安らぎと悲しみを感じてしまうのだった

『………私は、何時か私ではなくなってしまうかもしれない。』

13年前、サガが残した短い言葉。
事情を知らされた今となってようやく、あの一言は私への別れ言葉だったのだと、そう気付いた
ただ、済まないと……私がこうして13年もの間待ち続ける事になると、サガはそう知っていて私に詫び、さよならの代わりに置いて行ったのだ
そして、『別れ』と言うその言葉に籠められた真の意味を私が悟る時、サガ自身はもうこの世に存在しないと、それまでも…
サガをそこまで追い詰めたものの正体を、今の私は知っている
だけど、それを知った所で、私に残されたのは深い深い悲しみだけ………

は白い墓標に己が身を伏せた
頬から滴る涙が、夜露と交わり墓石の表面を零れ落ちてゆく
白亜の墓標とその下に眠る許婚と同じ程に、冷え切ったの身体
三者のうちで唯一血が通っている筈のの肉体は闇夜の色の衣に隠れ、蝋のような青白い肌を知る者は居ない

このまま死んでしまえたら……あの人の許へ。
そんな事を、今宵此処で何度思っただろう
…もう死んだも同然の自分だから
今は、墓守としてあの人の眠りを傍で見守る事だけが、この私の肉体を生かし続けている

は濡れそぼった顔を上げ、白亜の宮殿群の連なる小高い丘を振り返って見上げた
常に厳戒態勢の教皇宮・女神神殿はともかくとして、特別警戒中の今夜は各宮とそれに続く回廊にまでぽつぽつと篝火が焚かれ、煌々とした一本の道筋が目を引く
守護者不在の宮殿も幾つか存在するが、少なくとも警備の雑兵は配されているのだろう
下から三番目の宮殿正面を彩るオレンジ色の小さな灯火を見詰め、は自身まだ踏んだ事の無いその宮殿の出で立ちを思い描いた

…14年前、私を訪れたあの人の話に耳を傾け、同じ想像を膨らませた時は、今とは随分異なる心境だった筈なのに
今、私はこうして寂しく一人、嘗てあの人の住んだ宮殿を遠巻きに見上げている…

は、視線を上空遥かに移した
厳重警備で騒がしい聖域とは裏腹に、天は深々と星々の光を瞬かせている

13年前のあの夜は酷い嵐だった
アーモンドの樹の下、あの人と私に打ち付けた激しい風雨の感触が、まだこんなにはっきりと残っている…そして、稲妻に照らされたあの人の横顔も
あの時は、それが最後になるとは思いもしなかった
だからこそ、こんなにも最近の事のようにはっきりと思い起こせてしまうのかもしれない
…あれから13年、私は待った
13年経って告げられた現実に比べれば、不安に震えながら待ち続けた13年も幸福の一部だと、そう思う
……だって、不安に打ち震える事は生きた人間にしか出来ないのだから………そう、心の生きた人間にだけ
死を待つだけの今の私には、その不安すら抱く事は出来はしない…

そしてあの嵐の夜、自分の許婚が抱えていたであろう苦悩に思いを馳せ、が満天の星に向けて深い溜息を一つ吐いた、その刹那
風一つなく凪いでいた周囲を突風が吹き付けた
背後から吹きぬけた風がの髪を巻き上げ、頬をさらさらと撫でる
片手で髪を抑え、乱れた黒衣の裾を整えたはあっ…と息を呑んだ

…双児宮の篝火が……消えた?

今しがたの突風で消えたのだろうか、確かに双児宮に灯っていた筈の灯火が姿を消していた
…いや、双児宮だけではない、よくよく見ると、他にも幾つかの宮の灯りが消えている
は遠目で見上げているだけなので、それが一体どの宮とどの宮なのかまでは判らないが、不規則な間隔で灯火が消えているのだけは明らかだった
不思議な事に、消えているのは幾つかの宮の正面の篝火だけで、回廊部分は相も変わらず煌々と灯りの列が続いている
随分強い風であったので致し方無いとは言え、今頃各宮の警備兵はさぞ慌てている事だろう
一向に灯りの戻る気配の無い双児宮を暫し見遣り、は再び己の身を翻し………そしてその場に立ち止まった
…先刻まで自分が伏していた白い墓標のあった、その場所には。


「………サ…サガ……。」


己を鏡に映したかの如く黒一色の衣を纏った背の高い男が、こちらを向いて立っていた
頭部を覆うフードから覗くその端整な面影にはがくがくと膝を震わせ、長い間呼ぶ事能わなかったその名を口にした
深々たる闇の中、灯り一つ無いにも拘らず、サガの顔がはっきりと分かる
青白い肌に刻まれたサガの唇が、微かに動いた


「…。」

「……ああ……サガ。本当にサガなのね……!」


文字通り堰を切った様に、は目元から涙を滴らせサガに駆け寄った
黒衣の裾が派手に乱れたが、そんな事は今のにはどうでも良い事だった
何の躊躇も無く飛び込んだサガのその胸に恐ろしく硬い感触を感じ、は胸板から顔を僅かに逸らした
明らかに人間の身体とは異なる硬度を感じさせるそれは、黒衣越しにサガの身を被っている鎧であろうか
見れば、粗末な黒衣の解れ目から漆黒の金属がチラチラと覗いている
それは、も13年越しにはっきりと憶えているあの金色の鎧とは何かが違う


「サガ……、その鎧は…。」

「ああ…、それを訊いてくれるな。」


君は聡いな。
サガは少し困った様に眉間を寄せ、唇で僅かに笑みを作った
闇に浮かぶその微笑の、何と懐かしく愛おしい事だろう
の心の中で、長い事忘れていた感情がじわりじわりと広がり、やがて身体全体を満たした
…涙が、止まらない


「もう…逢えないと、ずっとそう思っていたから、私………。」

、私のために泣いてくれるのか。…君を酷く傷付け、苦しみだけを残した私を……。」

「…ええ、13年間貴方をずっと待ち続け、私はとても不安な日々を送った。…そしてその後に真実を聞かされ、もっと深く暗い闇に突き落とされた。」


は、サガの胸板を拳で数回、軽く叩いた
鎧越しにコツコツと小さな振動がサガの身体に伝わり、サガはその揺らぎに秘められたの言葉の真意を悟る
『でも、今再び貴方に逢えた』

…今この瞬間のの喜びが、はっきりとわかる
それほどまでに、自分はを苦しめ続けて来たのだ
いや、13年前のあの夜、私はその事を十二分に承知していた筈であったのに…


「…済まない。13年前の私は、どうしても君に別れ言葉を告げる事が出来なかった。
 そしてそれは、私が卑怯で穢れた男だからだ。自分の欲望の為に君を傷付け、そして退く事能わず、全てを壊した。私は……」

「サガ、もういいの。…もういいから…。」


はサガの懺悔を遮った


「貴方は、13年間自分なりに罪を償おうと苦しみ続けて来た。…私に対する罪だけでなく、もっと他の人達へ犯してしまった過ちにも。
 私はその間、村で一人待っていただけだったから何も知らなかったけど、真実を知らされて気付いたの。きっと、長い間貴方は独り苦しみ抜いたに違いないって。」

「……。」

「ずっと苦しかったのでしょう、サガ。貴方の真に孤独な苦しみに比べたら、私の13年は耐え切れぬ程の苦痛ではなかったと、そう思う。
 …だからサガ、もう謝らないで。貴方の罪は、もう既に赦されているのだから。
 私だけじゃない。貴方が傷付けてしまった他の人達も、きっと皆そう思っている筈よ。
 ……それに、今こうして貴方が私の前に立っている。その現実だけで私は充分なの。」


言葉を終えると、はサガの胸に再び顔を埋めた
黒衣と鎧越しに、サガの身体を抱き締める
…そうしていないと、目の前の青白いサガが今にも再び消えてしまいそうで、は怖かった
己を抱き締めるの腕が小刻みに震えている事に気付いたサガが、そっとを見下ろす

すぐ真下に見えるの髪の、何とやつれた事か
…いや、髪だけではなく、の全てが疲れ切っている
に取って、この13年は実にその何倍にも匹敵したのだ。…そして、私の死を知らされてからの日々は、この上なく苛烈にを追い立てたに違いない
それでも尚、私を赦すと、はそう言うのか………半日後には、再びに孤独の苦しみを与えてしまうこの私を………

目を伏せ、サガは暫し項垂れた
そして躊躇いがちに己の腕を持ち上げ、一度止めた後、の身体をゆっくりと抱き締めた


「ああ………偽りの肉体となって初めて、私は君に触れる事が叶う。」


サガの口を、感嘆とも悔恨ともつかぬ言葉が突いた
驚いたが顔を上げる


「………、私は今度こそ君に別れの言葉を置いて行こう。私は、そのためにこうして仮初めの肉体を得たも同然なのだから。」

「…サガ…。貴方は、やはり……。」

、私のこの肉体は、露の間に消えてなくなる。だからその前に、君に告げておきたい。」


サガはの頬に手を置いた
ぞっとするほど冷たいその指が、サガの正体を十二分に物語っている
しかし、自分の視界に現れた時からには分かっていた。…目の前に立つ嘗ての許婚が、冥界の住人であると
は、黙ってサガを見詰めた


、私はこれから果たさねばならない契約がある。だからもう、君の前から去らねばならない。…そして、契約を終えれば私は再び消える。
 君が謝るなと言うなら、もう謝罪の言葉は口にはしない。だがこれだけは憶えていて欲しい。
 ………私は、君をずっと愛している。14年前から、そして再びの眠りに就くその先までも。」

「サガ…。」


の頬を涙が伝い、サガの指先を濡らした
氷の様に冷たいサガの指に、の涙が熱を伝える―――生者の何よりの証である、温もりを。
死者たるサガは、の目尻をそっと拭うと目を細めて微笑み………蝋の如く青白い唇でに口付けた


「…ああ、ようやく、私は君に己の想いを伝えることが叶った。…随分と長い事、君を待たせてしまった。」


サガの口から、溜息が一つ零れる
それは、安堵の溜息であったのか、それとも約束故に言葉には出来ぬ謝罪の溜息であったのかは定かではない
だが、に取っては13年振りに感じる許婚の息吹であった事だけは確かだった


「……サガ。そろそろ急いだ方が…。」


サガの後背から、俄かに低い声が届いた
それは、サガとより少々離れた所に立つ数人の男のうちの一人の物だった
サガ同様に長い後ろ髪を靡かせるその男は、言葉遣いから察するにサガの後輩格でもあろうか
幾許かの気遣いを示しながらも、サガを促す姿勢なのは明白だ
……刻(とき)が、迫っているのだ


「…ああ、判っている。」


サガは居並ぶ男達を一瞥し、再度を向き直った


、今度こそ君と永久の別れだ。」

「…サガ…。」

「これから、聖域(ここ)は戦場となる。しかも凄惨極まる戦場に、だ。
 危ないから村へ帰りなさい、と言いたい所だが、君はきっと承知しないだろう。恐らくは、外へ出る事も禁じられているだろうから。
 だから、せめてこの墓地だけは血の気配から無縁である様に、私が結界を張って行こう。
 12時間後にはその結界も解けるだろうが、それまで此処に居る分には安全だ。」

「12時間後には……一体どうなるの、聖域は?教えて、サガ。」

「それは…今は君は知らない方が良い。私にも此処がどうなるかまでは分からない。
 …ただ、これだけは分かる。12時間後、仮初めの私は消え去り、再び暗い黄泉路を辿る。」

「…もう逢えないのね、貴方とは…二度と。」


は総てを悟り、サガをただ見上げた
の黒衣の肩が僅かに下がる
サガは、黒衣越しにのその両肩を抱いた


「ああ……、君は本当に聡い。私を困らせてしまう程に。だがそれ故に、私は君が愛しい。
 …、最後に私の願いを聞いてくれるだろうか。また勝手な事を、と君は思うかもしれないが。」

「…ええ。」

「12時間経って私が再度鬼籍に戻ったら、、君にはその喪服を脱いで欲しい。」

「喪服を…?」

「黒衣を纏うのは、死人である私だけで充分だ。
 、君は生きている。…今も、そしてこれからも。君が生きている証に、その黒衣を脱ぎ捨てて欲しい。
 無論、これは君の意思を無視した私の我儘だ。だから君がそうしていたいのであれば、今後もそのままで構わない。」


には、太陽の下で明るく生きて欲しい…14年前のあの朗らかさを取り戻して
私に出来る償いは、最早そのくらいしか残されてはいないのだから…

言葉に出来ぬその想いを込めて、サガは優しく微笑みを浮かべた
サガの笑顔と己の喪服、は暫し交互に見遣った後、サガの双眸を真っ直ぐ見据えた


「…解ったわ、サガ。それが貴方の願いだから。」

「ありがとう、。」


サガの微笑がより一層眩しく映えたのは、の視界が俄かに潤んで光を帯びたからであろうか
これが最後なのだと思うほどに、は今にも溢れ出しそうな自分の感情をより強く抑制しようとしてしまうのだった
刹那、墓地から見上げる聖域の火時計に、十二の青い炎が灯った
…サガの言う「刻」が、もう既に刻み始めているのだ
は、サガの背に置いていた自分の手を離し、数歩後ずさった


「サガ……私、こうして貴方に逢えて良かった。ずっと待っていた長い長い日々は、今では嘘ではなくなったもの。
 ………どうか、気を付けて。此処より貴方の御武運をお祈り申し上げております。」


の頬を、夜目にもはっきりと涙が伝った
二人の間の距離は、既にの涙を拭う事すら不可能なまでにお互いを隔て切っていた


「…行って来る。では、これで永久の別れだ、。」


たった一度だけを振り返り、サガはから遠ざかった
男達を墓地より送り出す一陣の冥風が、の黒衣の裾を大きく翻した













☆後書き☆


まずは、ここ数年多忙を極めたとは申せ、今回の作品の完結に丸二年も要してしまいました事、お詫び申し上げます。
…お詫び代わりにもなりませんが、お待たせしてしまった分、当初のプロットよりも多少は読み応えのある展開に持って行けたように感じられますので、少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。

今回の話は、山吹の花の如く「咲けども実る事のない愛」をテーマにしました。(「山振」とは、「山吹」の古い古い表記です。)
これまでに幾つかの話で「アイオロスの許婚」設定のヒロインを書いて参りました。「アイオロスの許婚」設定ですから、実際のヒロインの相手はアイオロスと深い繋がりのある人物に絞られます。シュラやアイオリア、そしてサガです。
これ以上このヒロインの出番を作るのは至難の業なので、流石にこの設定は多分もう出てこないと思いますが、ある時逆にふと「アイオロスに許婚がいたとすれば、サガにいてもおかしくないかも。」と気付き書き始めたのが今回のお話です。
…まあアレです、許婚の相手がアイオロスにせよサガにせよ、どっちにしても悲恋風味になるのがバレバレですけれども。(笑)

サガ最愛のくせにこんな事を書いて良いものか微妙ですが、同じ許婚なら絶対アイオロスの相手の方が幸せな気がします。←死なれたら元も子も無いだろうと言う突っ込み可(笑)
原作の少ない描写から推測するだけでも、アイオロスは許婚の事を100%優先して非常に大切にしてくれそうな印象があります。
一方、サガはどうだろう?と考えてみると、これが結構冷徹…いや冷酷な部分があるのではないかなぁ、と。そこの部分をなるべく違和感無く設定・描写して原作に噛み合わせてみました。
一種「打算」の如き聡さでサガは許婚(ヒロイン)との距離を保っている様に見えるかもしれませんが、この場合「打算」と言う表現は妥当ではないでしょう。
14〜15歳のサガに取っては、アイデンティティの置き場所は聖域だけでしょうから、打算と言うよりも寧ろ「意識せざるを得ない良識」であったのではないかと思います。
しかし、そんな事を言ってみた所で、ヒロインが放置される事には変わりがないですから、若きサガとしてもそこが苦しみ所だったのではないでしょうか。…ヒロインに対して愛情を抱いている分だけ。
思うのですが、今回の話の方向のままストーリーが進行した場合――つまり、許婚を捨てたくないから教皇職を辞退する、とアイオロスが述べ、その誠実さゆえに教皇が彼を次期教皇として選び、サガは補佐として聖域で定着する――サガの許婚とアイオロスの許婚はどちらが不幸だったのでしょうか?
無論、これはあくまでも「教皇は妻帯不可」と言う設定に従った場合の話ですけれども、アイオロスの許婚は最終的に婚約破棄扱いになってしまいますよね、自動的に。
その時、彼女はどう思うだろう?どれだけのショックを受けるだろう?と考えてみると、サガの下した一見冷酷な決断の方が実は誠実なのではないか?と思えて来るのです。この問題、考えてみると結構難しいです。本人たちの思惑と、教皇の思惑にズレがあるのが最大の不幸の始まりなのですが…。
まぁ、いくら冷酷とは言っても実際ちょっと詰めの甘い所があるのは、若きサガ故、とでも。(笑)

それにしても、「raison d'être」に続いてまた原作シーンとの並行描写は疲れました。(笑)
いちいち原作の一コマ一コマと照らし合わせながら、矛盾や動作描写の時系列とのズレはないか?…外の天候は?などと考えながら文章を捻り出すのは、本当に疲れます。それなりの楽しみもあるのですけれどね。
作品全体に占める次期教皇決定シーンの重要度自体は前回の「raison d'être」ほどではないので、その分だけは気負いが少なくて済みました。
その代わり、今回は別のシーンで要・原作引っ張り出しになりました。最後のシーンですが、つまる所、冥界編の冒頭部分ですね。
…で、書いていて原作に一つ突っ込み。……ねえ、サガ達に与えられたのが12時間なのは分かるけど、それって一体何時から何時までなの!?(笑)
ヘンな話、「冥界」編ですから、12時間の最後=夜明け(日の光が力を取り戻す時)だと考えるのが一般的ですけれど(実際、原作でもそんな描写がありましたが)、であればサガ達の登場って、どう考えても日暮れより前になりませんか?
よしんば日本の「冬至」に当たるくらいの時間配分だったとしても、原作冒頭の「今夜は満天の星で冷え込むな〜」ちっくな情景描写は明らかに「深夜」っぽくないですか?少なくとも9〜10時以降ですよ。う〜む、謎。
アニメでは、確か冒頭は夕闇の女神像描写だった記憶がありますので、時間設定としては実はあっちの方が正しいのかもしれません。それにしても一体いつの季節なのでしょう、冥界編…。(ちなみに、日本だと秋分に当たる9月下旬のギリシャ=日の出5時くらい、日の入り夜8時。ご参考までに)
今回の話では、そこをどうしようか非常に迷いましたが、ヒロインとサガの再会としては夕刻よりは深夜の方がしっくり来る気がしましたので、敢えて12時間の始まりが深夜になってしまいました。読みながら突っ込みを入れた方、貴女は正しい!(笑)



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